日语综合教程 第一课标注

2023-04-28 00:58:12   文档大全网     [ 字体: ] [ 阅读: ]

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海の中に母がいる



山好きの血が父方から流れているとすると、海好きは間違いなく母から しのばずのいけ とお 伝わっている。終戦間もなく、 のほとりを りかかると、 いけのはた おもて

に、ははがしゃがみこんで池の じっと見ている。声を

かけると、母は照れたような顔で立ち上げり「ちょっと海がみたくなって」

と言って笑った。

しのばずのいけ 当時、東大のそばに住んでいたので、買い物のついでに不忍池で休んで

いたのだろうが、その時の母の言葉が妙に忘れられない。小学六年の夏、母 かごしま へんぴ ぎょそん ひとつきく

の故郷の鹿 らしたことがある。母

の父は背の高い、こわい人で、そこでずっと医者をしていた。家から五十メ

さくらじま かいもんだけ はまべ

トルほどで海に出る。 開聞岳の見える美しい だった。母

が海を見たいと言ったのは、その故郷の浜辺のことを考えていたのかもしれ やこう れんらくせん ない。今なら二時間もかからない鹿児島は、その頃は ふつか ぼうきょう

日かかる遠い国だった。 の思いに駆けられても当然だったよ

うな気がする。

した

海好きといっても、心ゆくまで海と親しんだのはその夏だけで、あとは かいすいよく ていど はな じょうたい 学校から にゆく程 度だった。おそらく海と切り離 れた状態 あこが

がかえって海への れを掻き立てたのだろう。大学を出る年、なんとし かんけい しょくぎょう ゆうせんにゅしゃ ても海に関 係する につきたいとい、日本 に入社でき たいおう じんじ

ないか聞きに行った。 に出た人 事課長は「うちも、ほかの会社と同 ぶんがくぶ しゅっしん

じですよ。 では、どうもね」と気の毒がってくれた。 ふな

船会社だから、全員が船にのれるものと勘違いしていたわけだ。 あじ

それでも、船に乗って、海を思いのたけ味 わいたいと言う気持ちは、 おとろ さいわ

いっこうに えなかった。 フランスに行くことになり、留学生 馬賽 ふなたび は船に乗るように、という指示があった。マルセイユまで三十三日の船旅―― 考えただけでも嬉しさで気が遠くなりそうだった。しかし仲間の留学生たち むだ ふまんがお

は、なんでそんな無駄なをさせるのか、と だった。

まんきつ 4とうせんしつ えら 私は一人海の喜びを 喫するため、四 室を んだ。こ


きせつ ろうどうしゃよう ちかよ

こは季 の船室で、留学生が らないばかりでな ふなぞこ

く、 なので、海に近く、丸窓の外は青い波がすれすれにうねっている。 おお 塞ぐ PIPE 海が荒れると、船員が鉄の 覆いで丸窓をふさぎにくる。ベッドは鉄パイプ にだんだな かざ ろうごく

二段棚 カンバスを張っただ。りなど何もなく、牢獄さながらだ。 いごこち ちょくせつ せっしょく しかし文明の よさはつねに、大自然との直 の接触を しゃだん しゃくねつ こうかい かんぱん 遮断する。例えば 海では、船底は四十度を越え、甲板でも あつ もちろん ゆうが

燃える暑 さだ。勿 論一、二等船室は に冷房されているが、それで ねったい あらあら やじゅう

は、コンラッドの描くこの の海という荒々 しい のようなも じったい かぎ きょうれつ すはだ

のの れることはできない。限りなく な、 ならす やけど した そうだい あじ ぐに を起こす太陽の下 でしか、紅海の目くるめく壮 さは味わえ

ないのである。

はげ

私は朝、甲板で激しい海の風に吹かれながら飲む大カップのコーヒーに けんそう 満足した。中国人、マレー人、インドネシア人、ウエトナム人たちの喧噪 たま なかで、甲板に寝そべってへミングウエイを読むのが、堪らなく嬉しかった。 へさき ぼうけんしゃ

に立って風を受けていると、まるで大航海時代の になった

ような気がした。

ひがし れいこく くらげ はくりょくしょく

東シナ海の な青い波、水母の浮かぶボルネオ海の 貼貼地 そうれい らくじつ こがねいろ くだ

ねっとりした波、インド洋の の下で けてい ちちゅうかい すごみ あおぐろい こっこく た波、 凄み を帯びた 波――いずれも に私 たましい げんそく

ってやまなかった。朝から晩まで私は からただ海の青さ、

広さに見入っていた。



人間は愛するもののそばに長くいたいと思う。ただいるだけで幸せなの たいくつ

である。人が退 するのは、ひたすら愛する物を失ったからではないだ あいだ

ろうか。この大航海の間、私は自然の素晴らしさと同時に人生の過ごし方も まな

学んでいたようながする。

こい みよしたつじ

あれからもう三十年。今も海が恋しい時、懐かしい三好達治の詩を読む。 つか もじ

「海よ、僕らの使 文字では、お前の中に母がいる。そして母よ、フラン

ス人の言葉では、あなたの中に海がる。」〔フランス語の母はmere、海はmer

(『生きて愛するために』中央公論社より)


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