茶道

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『鼻』について

あらすじ

昔、禅智内供という有名な和尚さんは五、六寸（１８ｃｍ）の長さのある鼻の持ち主だった。板で鼻を持ち上げなければ食事もできない「禅智内供」だった。その不便さ以上に鼻のために自尊心を傷つけられた。何とか鼻を短くしたいと願い、弟子から奇妙な治療法まで受け、鼻を短くした。しかし、短くなってもまわりから冷笑されてしまった。 さて、「禅智内供」の心の内は、どう変化していくのか。作品のなかで、繊細な筆のタッチでユーモラスなストーリーが展開されていった。「中童子」「侍」「下法師」といった「傍観者の利己主義」と弱い人間の自尊心の愚かさという近代人の心理の一面を、『今昔物語』と『宇治拾遺物語』に題材を取り、歴史短編小説に仕上げたものだ。いわば、「人の幸福をねたみ，不幸を笑う」と言う人間の心理を捕らえた作品だ。

主な登場人物

「禅智内供」：ヒーロー、宮内の内道場に奉仕する僧だ。鼻が長いことを苦にしていた。自分自身の中に原因があるのではないかと思わせる「自意識過剰」「人並み意識」の人間像だ。

「京へ上った弟子の僧」：禅智内供の弟子だ。禅智内供の苦しみが分った。同情を寄せ，鼻を短くする法を長楽寺の宮僧から教わってきて禅智内供に伝え、試した。

創作背景

新思潮派とは理知に伴って現実を処理し繊細で明晰な心理的追及を中心にすえながら、人間性の本質を掘り下げようとする文化グループのことをいう。芥川龍之介をはじめ、菊池寛や久米正雄などが。雑誌『新思潮』第三四次活動し、『鼻』などのような名作を後世に残した。

芥川龍之介についての紹介

一 作家について

芥川龍之介（1892年3月１日-1927年７月２４日）は大正時代を中心に活躍した作家である。人間や世間を見つめる冷静な視点と、格調高い文章で読者を魅了してきました。1892年東京市京橋区で生まれ、1898年江東尋常小学校へ入学した。


ずっと成績が優秀なので、1913年（大正2年）東京帝国大学文科大学英文学科へ進学した。東京帝大在学中の1914年（大正3年）2月に一高同期の菊池寛・久米正雄らと共に同人誌『新思潮』（第3次）を刊行した。まず「柳川隆之助」の筆名でアナトール・フランスの「バルタザアル」、イエーツの「春の心臓」の和訳を寄稿した後、10月に『新思潮』が廃刊に至るまでに同誌上に処女小説「老年」を発表し、作家活動の始まりとなった。1915年（大正4年）10月、代表作の1つとなる「羅生門」を「芥川龍之介」名で『帝国文学』に発表し、級友鈴木三重吉の紹介で夏目漱石門下に入った。1916年（大正5年）には『新思潮』（第4次）を発刊したが、その創刊号に掲載した「鼻」が漱石に絶賛された。翌年5月には初の短編集『羅生門』を刊行した。その後も短編作品を次々に発表し、11月には早くも第二短編集『煙草と悪魔』を発刊した。

1918年（大正7年）3月、教職を辞して大阪毎日新聞社に入社、創作に専念した。体力の衰えと「ぼんやりした不安」から、1927年7月24日未明、「続西方の人」を書き上げた後、致死量の睡眠薬を飲んで自殺した。その死は大正時代文学の終焉と重なっていた。すでに作家としての地位を確立していた芥川は、出版社で働く知人の話を元に、ひと晩で書き上げたといった。

二 流派について

「鼻」は、芥川龍之介による初期の短編小説である。 1916年に『新思潮』の創刊号で発表され、夏目漱石に激賞され、広く注目された。新思潮とは、日本の文芸雑誌である。1907年（明治40年）小山内薫が創刊し、東京大学（東京帝国大学）系の同人誌として後に続いた。特に第3次-第4次新思潮の同人菊池寛、芥川龍之介、久米正雄、松岡讓らを新思潮派といい、大正文学の一つの拠点になった。同人に共通した明快な主題の処理と的確な技法から彼らは新理知派、新技巧派ともよばれることとなっている。また、よく知られている川端康成も新思潮に参加した。

三 評価

夏目漱石は、１９１６年２月１９日に、「大変面白いと思ひます。落着があつて巫山戯てゐなくつて自然其儘の可笑味がおつとりと出てゐる所に上品な趣があります」とたたえる手紙を送りました。芥川龍之介は、この評価で、文壇での地位を確かなものにしまった。

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